相談前の状況
地方都市で不動産管理業を営む会社の代表者様からのご相談でした。
数年前にM市内の古いアパート一棟を一括で購入しました。購入当初から、1階の一室(101号室)には前所有者が「長年住んでいる中国国籍の住民の方がいる」とだけ説明していましたが、契約書は所在不明で、家賃の振込も何年も前から止まっていました。
代表が現地を訪れても、部屋の呼び鈴に応答はなく、ポストには大量の未開封の郵便物が溜まっていました。近隣住民に聞き込みをしても、「最近は誰も出入りしていない」「たまに夜に電気がついているような気もする」と曖昧な証言ばかりでした。代表としては、建物の老朽化に伴い建て替えを検討していましたが、この一室の存在が大きな障害となっていました。
自分たちではどうしようもできなかったので、吉原隆平綜合法律事務所に相談に行きました。
解決への流れ
受任後、弁護士は現状の法的整理から着手。賃貸借契約書が存在しないため、賃借人の特定が最優先課題となりました。弁護士は、まず「占有移転禁止の仮処分」を申し立て、現地のポストに届いていた郵便物や公共料金の名義などを調査。その結果、中国国籍の住民がかつて住んでいたことが判明しました。
その方に対して内容証明郵便を送付しましたが、返答はなく。やむなく、その方を被告として建物明渡しと未払い賃料の支払いを求める訴訟を提起しました。その後、公示送達の手続きを経て、裁判は全面勝訴となりました。
判決確定後もその方からの連絡は一切なく、弁護士は速やかに強制執行の申立てを行いました。執行当日、執行官とともに現地に赴いたところ、部屋の中はゴミと家具が散乱し、生活の痕跡はあるものの、居住者の姿はありませんでした。近隣住民の話では「数か月前に外国に帰ったらしい」とのことだったが、真偽は不明のままでした。
専門業者を手配し、部屋の残置物をすべて撤去しました。
弁護士のサポートによって、建物の明渡しは無事に完了し、ようやく建て替え計画を進めることができるようになりました。
吉原 隆平 弁護士からのコメント
本件は、賃借人の所在が不明で、契約書も存在しない場合でした。
そのような場合でも、法的手続きを丁寧に踏むことで、明渡しを実現することは可能です。
ただし、手続きには時間と労力がかかるため、早期に専門家に相談することが重要です。
また、今回のように外国籍の方が関与している場合、連絡手段の確保や送達の方法に工夫が必要となることもあります。公示送達や仮処分など、通常とは異なる手続きが必要になることもあるため、慎重な対応が求められます。
勝手に住んでいただけだからと、勝手に動産類を処分すると、違法な自力救済と主張されたり、損害賠償請求をされるリスクもあるので注意が必要です。
F社のように、「誰が住んでいるのか分からない」「契約書がない」といった状況でも、諦めずに一歩ずつ進めることで、最終的な解決にたどり着くことができます。不動産の明渡しに関するトラブルは、感情的な対立が少ない分、逆に“無関心”や“放置”が長期化の原因になることもあります。早めの対応が、被害の拡大を防ぐ鍵となります。
問題が複雑化する前に、経験豊富な専門家の力を活用することをおすすめします。